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2023年07月04日

カテゴリー:院長より

見果てぬ夢の地平を透視するものへ-203

このマックスウェル・ジョーンズも一九七四年には、治療共同体理論を一歩前進させた精神医学のシステム論ともいうべきSystem Theoryを投げかけてきた。

一九五七年にミルトン・グリーンブラットが社会システムの中の精神科医(Social System Clinician)のモデルを唱えているが、マックスウェル・ジョーンズのシステム理論もその延長にある。すなわち、個人(患者)だけを治療するのではなく、その個人(患者)が組み込まれている社会的状況(Social System)を治していく精神科医のあり方の提示である。

マックスウェル・ジョーンズはこのシステム理論を彼自身が実践している治療共同体のなかにあてはめて、開かれたシステム(Open System)という未来像を語ろうとする。

Open Systemとは、外からの影響に対して開かれているのみならず、内に対しても開かれているような、即ち、様々な矛盾や問題を各メンバーが責任を持って効果的に解決する事が出来、それを学び続ける事が出来るようなシステムである。

マックスウェル・ジョーンズは述べている。

「社会的システムは『閉ざされたもの』から『開かれたもの』までの範囲で存在している。実際には誰もが比較的閉ざされたシステム(学校、家庭、大学、産業構造、等)の中で育つ。そのようなシステムを開く方向で変える事は必然的に不安と抵抗をひき起す。

精神医学が所謂治療と呼ばれるものを越えて、その機能を拡大し社会的諸問題の中に入り込んでいくならば、そこには新しい技術と新しい見通しが要求される。」

「薬物依存(中毒)を“治療”することはその基底に流れている社会的問題を回避してしまうことである。人種問題を客観的なオブザーバーとして語る事は無気力(impotence)を体験することである。」

(Ⅴ状況のなかの精神医学/状況のなかの精神医学 つづく…)

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