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2024年02月26日
カテゴリー:院長より
見果てぬ夢の地平を透視するものへ-209
精神医学は状況論のなかでその大きな翼をひろげなければならない。既成のあらゆる症候論をはなれて、まず個人の状況を論じる学問でなければならない。そうでなければ、<精神障害者>としてレッテルをはられ、ほとんど一生を精神病院の闇のなか、「治療なき拘禁」のなかに葬り去られてしまう人達の魂は永遠に浮ばれることはない。
私は、状況論としての精神医学の措定のなかでことさらに、精神障害の原因論に触れないできた。このことは状況論が原因論として定立しないということを意味するものではない。しかし、状況論が原因論的領域にまで<学>として到達するまでにはまだ多くの検証を必要とするであろう。そして、まずその前に私達は精神医学とそれが果し得た医療という大状況の変革を切実に問われているのである。私達の異議申し立ては寸時も休息を許されないのである。
(Ⅴ状況のなかの精神医学/状況のなかの精神医学 終)